金融機関が応諾の場合のメリット(平成30年9月1日現在) 不動産ADRで<申立>を金融機関が応諾した場合、以下のメリットがあります。 ・調停期間中、調停合意案(「事業再生計画案」)を履行中は「期限の利益喪失」等の法的措置の回避が出来ます。 |
期限の利益喪失とは
債務者に一定の事由が生じた場合、債務者は期限の利益を主張することができなくなり、債権者は、期限の到来前であっても、債務の履行を請求することができるようになります(民法137条)。これを期限の利益の喪失といいます。
わかりやすく説明しますと、期限の利益を無効(喪失)にさせることで、債務の返済に関する一括請求ができるようになるということです。
期限の利益を喪失するとは、決められた通りにローンの支払いができなくなったときには、約定書に定められた期限の利益喪失事由に該当することになったので、借入先から、住宅ローン全額返済の請求をされても、拒むことができないことを意味します。
民法及び当事者間の約定書における期限の利益喪失
民法 第137条(期限の利益の喪失)
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
- 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
約定書(金銭消費貸借契約書)における期限の利益喪失
約定書(金銭消費貸借契約書)では以下のような文言で期限の利益喪失事由が規定されています。
第○条(期限の利益喪失)
次の場合,乙は,甲からの通知催告がなくても当然に期限の利益を失い,直ちに残元利金全てを弁済しなくてはならない。
- 1回でも元金もしくは利息を期限に支払わないとき
- 他の債務につき仮差押え,仮処分又は強制執行を受けたとき
- 他の債務につき競売,破産,民事再生又は会社更生手続の申立てがあったとき
- 乙の振出し,裏書,保証にかかる手形・小切手が不渡りとなったとき
- 甲に通知せず,乙が住所を移転したとき
民法だけの期限の利益喪失だけによるのであらならば、破産をしない限り、一括請求をすることができません。債務者側の借入金の滞納が発生したときに、債権回収の手段が大きく限定されることになるからです。
そのため、民法よりも期限の利益喪失に関する条件を厳しくする形式で、特別に、約定書(金銭消費貸借契約書)に期限の利益喪失事由を定めたのです。
【参考】
催告書